自立への勇気とそのとき必要な余力
世界的に人気のマインクラフト。欧米ではアトラクション施設の開園、来年には映画の公開が予定されています。その魅力の1つは、生成するたびに変化するワールド、さらにはその探索だと思います。探索に必要なアイテムは、そこいらにある木や石などから生成することで手に入れるのですが、木や石のブロックをマイニングすることで手に入れるのはこれまでのゲームに無く斬新だったのではないでしょうか。生成された世界を壊すことができるとも言えるのですが、壊しつくすことができない広さはまた驚愕でしたね。
さらなる魅力は、そうしたマインクラフトの世界における同じワールドを友達と一緒に探索できるマルチプレイ。モンスターが襲ってくるなど冒険としての緊張感もまた楽しい。現実ではない安心感があってこそ成り立ち、共に目的を達成するためのコミュニケーション能力を遊びで学べる大きな利点があります。
子供は成長が早い、覚えるのが早いと言われますが、大人の真似をできるところまでであって、形式的にあいさつはできても、社会を形成、継続させるための対話にまでは至りません。コミュニケーション能力は、仕事をするうえで必須であり、生き方であり、共に生きる人たちの文化、思想につながる最も大事な能力の1つです。大人は、子供の成長を早く促すあまり、無理やり覚えさせることなど子供に強いてしまいがちですが、パターンで思考が画一化されてしまうと、自分で能力を獲得する能力を失ってしまいます。これは、子供のストレスにつながっていることでしょう。引きこもりは増える一方と聞いています。
かといって、いつまでも子供でいさせるわけにもいきませんから、そのバランスが難しいのですが、急がば回れの格言のとおり、焦って成長させようとすればするほど自律かつ自立できなくなるジレンマに陥っているものと思われます。そういう意味で、当教室では、生徒さんの自由度を可能な限り高めており、場合によっては保護者様の考え方と異なる部分があるかもしれません。しかし、生徒さんが「言われたことをやって、その時間を我慢すれば良い」などという考え方になってしまっては、まったくプログラミング思考とは言えません。まずは、自らの意思で、その時間を有効に使わなければならないことに気付かなければなりません。
生徒さんにはよっては、プログラミング能力を高めることであり、自分の立ち位置を見極めることであり、マイクラを通じた他の生徒さんとのコミュニケーションだったりします。小学生の頃は特にそれ以上にプログラミングの能力を高めることに重点を置かなくても良いですし、むしろそうした指導はプログラミング嫌いにさせるだけです。たとえば受験という現実は徐々に差し迫ってきますから、自らの意思でそれに対処しなければなりません。その対処する能力こそプログラミング思考だとも言えます。十八歳になれば、そのとき急に自立できるかと言えば、そんなことはできないことは十八歳を超えている人はみな知っています。人はアナログで、時間的に連続した成長をすることを身を持って体験しているのですが、他人に対しては時間不連続なデジタル的成長を強要しがちです。特に相手が子供であったり、弱者であったりしたとき、その傾向が強いでしょうね。
やさしさと厳しさのバランスが大変難しいですが、子供がいずれ自立しなければならないことに気付いたとき、自らその厳しさに立ち向かう勇気と余力がそこになければ、引きこもりになるだけでしょう。マインクラフトが、総合的にコミュニケーション能力やプログラミング思考を養い、子供たちに、自立への勇気とそのとき必要な余力を与えてくれることを期待します。