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「たかがマルバツ」に潜む、プログラミング教育の本質と人生を生き抜く力

2026/07/13

「たかがマルバツ」に潜む、プログラミング教育の本質と人生を生き抜く力

 

現代のプログラミング教育において、子どもたちが真っ先に惹かれるのは、画面が華やかに動くアクションゲームや、派手なエフェクトが飛び出すクリエイティブな作品でしょう。視覚的な楽しさから入ることは、興味の入り口として非常に有効です。

しかし、当スクールで一人の生徒さんが今、あえて挑戦しているのは、誰もがルールを知っている究極にシンプルなゲーム「マルバツ(三目並べ)」です。

一見すると簡単そうに見えるこのゲーム。実は、派手なゲームを作るよりも何倍も難しく、プログラミングの本質である「アルゴリズムの構築」「問題解決能力」、そして「変化の激しい時代を生き抜く力」が凝縮されています。今回は、このシンプルなゲーム作りがなぜ初学者にとって最高の「逆境の練習」になるのかを解説します。

 

1. なぜ「派手なゲーム」より「マルバツ」の方が難しいのか?

Scratch(スクラッチ)などのビジュアルプログラミング言語は、キャラクターを動かしたり、音を鳴らしたりといった「見た目が派手なもの」を直感的に作れるのが得意なツールです。これらは感覚的にコードを繋ぎ合わせるだけでも、ある程度の形になります。

一方で、マルバツゲームはどうでしょうか。画面の動き自体は非常に地味ですが、裏側では極めて論理的かつ厳密な処理が求められます。

  • 3×3のマス目の状態管理(どこに何が置かれているか)

  • 交互にターンを入れ替える処理(プレイヤーと相手の切り替え)

  • 勝敗の判定アルゴリズム(縦・横・斜めの計8パターンが揃った瞬間の検知)

  • すでに置かれているマスには置けないという制限

これらはすべて、制作者自身が頭の中で論理的な手順(アルゴリズム)を組み立て、コードに落とし込まなければ1歩も前に進みません。「なんとなく動いた」が通用しないからこそ、初学者にとっては「単純ながらも極めて難しいプログラミング」となるのです。

 

2. 「教えない」という指導法と、質問することの難しさ

当スクールでは、この壁に直面している生徒さんに対し、「あえてどうすれば良いかの答えは教えない」というスタンスをとっています。もちろん、生徒さんから「ここが分からない」と聞かれれば全力で答えます。しかし、実はこの「聞く(質問する)」ということ自体が、子どもたちにとって最初の高いハードルなのです。

自分が何に躓いているのか、どこまでが理解できていて、どこからが分からないのか。それを言葉にして他者に伝えるには、自分の思考を客観的に見つめる「メタ認知能力」が必要です。

「分からない」を言語化して質問する行為そのものが、高度な論理的思考のトレーニングである。

答えを簡単に与えてしまえば、その場は解決するかもしれません。しかしそれは、講師の思考をなぞっただけに過ぎず、生徒自身の力にはなりません。あえて教えないことで、生徒は「どう質問すればヒントが得られるか」を必死に考えるようになります。

 

3. 検索しても答えが出ない問題に、どうアプローチするか

現代は、分からないことがあればインターネットで検索すれば、多くの場合すぐに答えが見つかる時代です。しかし、プログラミングにおける本当の成長は、「検索してもそのままの答えが出てこない問題」に直面したときに始まります。

マルバツゲームの勝敗判定ひとつとっても、Web上のコードをコピー&ペーストするだけでは、自分の作品の構造と噛み合わず、必ずバグが発生します。最終的に求められるのは、以下のプロセスを自力で回す忍耐強さです。

  1. 課題の分解:大きすぎる問題を、小さく制御できる要素に切り分ける。

  2. 仮説と検証:「こうすれば動くのではないか」と予測し、実際にコードを書いて試す。

  3. デバッグ(原因究明):思い通りに動かなかったとき、どこに原因があるかを突き止める。

初めて出くわした課題に対して、自分なりのアプローチ方法を見つけ出し、解決まで泥臭くやり切る力。この「検索の先にある思考力」こそが、AI時代において最も価値を持つ能力です。

 

4. たかがマルバツ、されど人生の「逆境を乗り越える練習」

プログラミングと一口に言ってもその領域は多岐にわたりますが、根底にあるのは「課題解決」です。当スクールが目指しているのは、単にコードが書けるプログラマーの育成ではありません。プログラミングという手段を通じて、「生きる意義を見出し、意思を持たないロボットや人形になってしまわない人間」を育てることです。

与えられた指示通りに動くだけの存在であれば、これからの時代、本物のロボットやAIに取って代わられてしまいます。自分で問いを立て、自分の意思で解決策を模索し、失敗しても諦めずに立ち向かう。

たかがマルバツゲームの作成かもしれません。しかし生徒さんは今、画面の向こうにある複雑な論理の壁と戦いながら、人生における「逆境を乗り越える練習」をリアルタイムで行っています。

この試行錯誤の末に、自力で(あるいは的確な質問を手に入れて)マルバツゲームを完成させたとき、その生徒さんは「検索に頼らない本当の自信」を手に入れるはずです。その日を楽しみに、私は今日もじっと彼らの思考の伴走を続けています。